通訳ガイド当校合格者佐合正一さん
2017年度通訳ガイド試験当校合格者

<自己紹介>

私は、化学会社に42年間勤務し、2017年に退職しました。入社して10年間は中央研究所で、新製品の開発や触媒研究に従事しておりました。1986年に東京に転勤し、米国の化学会社との合弁事業の企画、立ち上げに従事しました。これが私にとって本格的に英語とふれあう人生の最初の出会いでした。企画部に出勤した初日、OFFICEにかかる電話を取ったところ、海外からしかも英語で早口なのです。(その時はそう感じました)何か返事をしなきゃと思っても、「アー、ウー、エー」と何も英語が出てこないのです。曲がりなりにも研究職時代には、英語の論文を読むことはもちろん英語での投稿もしていましたので、この出来事は相当なショックでした。それから、就業後にビジネス英会話学校に通いながら、当時はメールはありませんでしたから、TELEXや英文FAXをやりとりしたり、英語での会議に出席しながら実務を通じて勉強しました。その後10年間を立ち上げた合弁事業会社に出向して働きました。その間は、社内公文書や会議はすべて英語でしたので、ビジネスに使う英会話はあまり不自由することはなくなりました。
その後、出向先から東京の本社勤務にもどりました。アメリカでの工場建設や市場開発のため出張の機会も多かったのですが、やはり日本の会社ですので、自分の頭がまた日本ガラパゴスに洗脳されているように感じていました。そんな8年間が過ぎ、次の辞令はニューヨーク勤務でした。ニューヨークでは、部下は皆アメリカ人ですので、会社では英語、買い物も英語、家内とだけ日本語の毎日でしたが、英語が世界の共通語である重要性を強く認識し、またアメリカのダイバーシテイの強さは英語が基本となっていると肌で感じることができました。
帰国後、暫く国内の会社で勤務しましたが、退職後は、私の人生で英語を通じて培った世界観、人生感、そして海外の友人たちとの触れ合いを大切にしていきたいと思いました。2020年には東京オリンピックが開催されます。そこで仕事を通じて日本の国家事業に貢献できる通訳案内士を目指し、友人から丁寧な指導と推奨された富士通訳ガイドアカデミーに通学を始めました。

1.1次試験英語対策

1次試験は、定められた2時間の間に、5つの問題を解かねばなりません。配点は問題4(5問)と問題5(6問)で100点中60点が配分され、各々1問あたりの配点が6点、5点と大きくなっています。まずこの問題4と問題5で加点しておかなければならないと思います。このうち問題4は正確な英文法の理解に基づく英作文能力、問題5は一般常識で勉強した観光に係わる幅広い知識力が必要でしょう。問題1、問題2、問題3では、知念先生や岩渕先生が繰り返し言われている単語力に基づく英文読解力が重要だと思います。授業で勉強する精読用英文を読んで、ひとつひとつの単語にとらわれず内容を早く正確に理解する練習が必要と思います。また英文の内容を理解すると同時に英作文の能力も求められます。正しい英作文には何といっても正しい英文法を身に着けてなければなりません。時制、仮定法、分子構文、倒置、前置詞の使い方など、名詞を動詞で繋げていただけでも通じるビジネス会話の世界が長かった私には、英文法の知識はとても重要でした。私は大学受験以来、英文法の本を見たこともなかったので、岩渕先生が説明の合間に黒板に書かれていた文法のポイント解説はとても役にたちました。富士通訳ガイドアカデミーでの教材以外に、チャート社の「UPGRADE英文法・語法問題」を勉強をしたことも良かったと思います。

2.1次試験社会科対策

もともと地理や歴史が学生時代から大好きで、仕事で出張時には、合間をみては近くの名所旧跡を訪れるのが楽しみでした。そして訪れた場所を、自分の地図に書き込んだり、名所案内のパンフレットを整理して保管していました。また藤沢市、鎌倉市に20年以上住んでおり、鎌倉の寺社仏閣、禅の教えにはとても興味がありましたので、「鎌倉検定試験」を受験して2級に合格しました。でも通訳案内士の社会科試験は好きというだけでは合格しません。地理と歴史は、富士通訳ガイドアカデミーの教科書に従ってしっかりとした「おさらい」が必要でした。地理では、有名な観光地、旧跡、お城の所在地と写真の組み合わせが重要でしょう。歴史では、各時代での大きな出来事を時系列で理解することがポイントです。例えば大化改新、平城京、平安京、鎌倉幕府、室町幕府、戦国時代、江戸幕府、明治維新でのエポックメイキングなアイテムの理解、それと各時代での文化の特徴を代表的な作品―作者―写真の繋がりを持って覚えておくことが必要だと思います。一般常識は、ガイドとして 基本的に必要な知識が問われます。毎年改訂される、富士通訳ガイドアカデミーのテキストがとても役にたちました。併せて日頃から、新聞で観光に係わる話題に気を留めて読む習慣も大切と思います。岩渕先生は、東京新聞の日曜版を推奨されておられましたが、「世界農業資産」の特集内容が、実際試験に出題されたのには驚きました。

3.2次試験対策

2次試験は、日本文の英訳と選択課題の英語でのプレゼンです。前者は日本の通訳案内士の先生が、日本語を朗読され英訳して答える形式です。後者はネイティブの先生に対して、選択したアイテムについて2分以内でプレゼンを行います。その後、その内容に関連して先生といくつかQ&Aを行います。富士通訳ガイドアカデミーでの2次試験対策の授業は、実際の試験と同じ方式でプレゼンの訓練を受講できました。タントラム先生とブレイ先生の授業を受講しましたが、先生方のネイティブ英語のご指導を頂いたおかげで、本番の試験では度胸が座ってとても役にたちました。特に私はついメモを見て話す癖があり、両先生に「相手の目を見て話すように」と教えていただいたことを試験で実行できたことが合格したポイントと感じております。

4.これから受験される方へのアドバイス

まず、通訳案内士(英語)受験を目指す方は、まず英語を好きになられることが大事だと思います。
私が、ビジネスで英会話を勉強した時、学んだ二つのことがあります。一つは、聞くときは単語をすべてを聞きとろうとするのではなく主語と名詞と動詞だけに集中し、話すときも主語と名詞と動詞を、はっきり発音するように気をつけました。二つ目は日本語で考えて英訳して話すのではなく、英語で考えて話すようにすることです。日本語の意味は複雑で、英語に訳そうとすると時間がかかります。ビジネス会話では、ビジネスタームもテクニカルタームも英語の方が双方にとって共通語が多いのでわかりやすいのです。通訳ガイドの場合も名所旧跡のご案内、日本文化の紹介はある意味で使用するテクニカルタームが決められていると思います。英語を使いこなしていると、日本語の方が、説明が長くなって面倒だと感じられるかもしれません。それが、私が英語を好きな理由のひとつです。

5.富士のよかったところ

私は2015年12月に富士通訳ガイドアカデミーに入学しました。1年目は、一次試験の社会科3教科は合格しましたが、肝心の英語で不合格となってしまいました。ここであきらめずにもう一度チャレンジする気持ちになったのは、なんといっても知念先生からの「次は1教科だけ、集中して頑張って」という暖かい励ましでした。
なんといっても、国家試験は年1回しかありません。「継続は力」という言葉があてはまるのがこの受験対策と思います。単語は一度覚えてもまた忘れるという繰り返しですが、でも毎週四ツ谷で授業にでていることが記憶の固定化に役立ちます。同じ志を持つ仲間と共に、焦らず授業にでることで、一歩一歩でも前に進むことができたと思います。2階のフロアに入ると、挨拶の言葉をかけていただいた事務所の方々の笑顔も、大きな支えとなりました。ありがとうございました。