通訳ガイド当校合格者村上 宏さん
2020年度通訳ガイド試験当校合格者

<自己紹介>

昨年3月末に41年間務めた会社を退職し、1年くらいは、好きなことをして過ごそうと思い、長年中途半端に終わっていた英語の勉強に取り組むことにしました。何か具体的な目標がないと続かないので通訳ガイド試験に挑戦することにして、いくつかの学校を調べて、富士通訳ガイドアカデミーの週2回(月・木の午前中)コースに通うことに決めました。週に2回、四谷まで通学するということになり、会社生活からリタイア生活への丁度よいソフトランディングになりました。
英語に関しては会社で3年間、輸出部門に在籍したことがあり、その間は海外出張も毎月のようにしていましたが、商談を英語で行えるレベルには至りませんでした。その前後に英検準1級を取得し、TOEICも800点までは行きましたが、その頃が英語力のピークだった気がします。

1.1次試験英語対策

英語1次試験は、日本の歴史・文化や観光資源を扱った問題が殆どで、英語の試験としてはかなり特殊な試験なので、まずは過去問を解いてみて試験の傾向を掴むことが大切だと思います。語彙のレベルとしては富士アカデミーの『必須単語・熟語集』の7割くらい憶えれば十分ではないでしょうか。ただ日本的事象に関する特殊なものも多いので『文化・観光・時事単語集』の学習も重要です。特に最後の日本的事象語句問題では「千木」、「警策」、「狭間」など日本人でもなじみの薄い語句について出題されることもありますが、これらは富士通訳ガイドアカデミーの一般常識の教材で学習できます。観光地の概要・特色を知らないと解けない問題もありますので、これは地理の勉強を進めるなかで解けるようになってきます。
私が一番苦労したのは英作文でした。最も適切な英訳を5文のなかから選ぶのですが、当初は全く歯が立ちませんでした。しかし毎週小テストを繰り返し解いているうちに段々と冠詞、単数複数、時制、関係詞の用法等の間違いのパターンが分かってきました。また知念先生が本試験の少し前にまとめて下さった「英作文解法の手引き」というプリントも役にたちました。授業では、最初に単語の口頭でのテストがあり、英文精読と1次試験の出題パターンをコンパクトにした小テストが毎回行われますので、これを丁寧に復習すれば実力は自然とついてきます。おかげで、本番は、素直な問題が多かったこともありスラスラと解けました。

2.1次試験社会科対策

地理は富士通訳ガイドアカデミーのプリント教材で十分だと思いますが、私の場合は「旅に出たくなる地図」という大判の地図を買って、プリント教材の学習時や過去問を解きながら、出てくる場所を確認してマーキングするとともに周辺の観光地や観光地との位置関係もチェックしました。地図と一緒に憶えた方が記憶に定着しやすいですし、最近は場所の位置関係を問う問題も多いのでこれは有効だと思います。
歴史は大学入試以来40年以上遠ざかっていたので、まず記憶を呼び戻したいと思い「学びなおすと日本史はおもしろい」という本で全体感を掴みました。このような類書は色々ありますので、一冊読んでおくことはお勧めです。富士通訳ガイドアカデミーでは山川出版の「詳説日本史」を教科書として授業が進められましたが、私には取っ付きにくく富士通訳ガイドアカデミーの様々なプリント教材を中心に学習し、出題頻度の高い文化史、美術史を教科書で詳細を確認するようにしました。そして、一問一答形式の「確認テスト」を繰り返し何度もやりました。

一般常識は、模擬試験の結果が良かったこともあり少し油断していたので、本番では大苦戦しました。昨年まで殆ど出なかった日本の観光政策、IR、地域の活性化に関する問題が複数問出て、全く分からず当てずっぽうで選択肢を選びました。岩渕先生からは観光白書は必ず目を通しておくようにとアドバイスをいただいたのですが、観光庁のホームページから概要をプリントアウトはしたものの斜め読みしかしていませんでした。何とか合格点に達したので良かったものの、試験直後にはちゃんと先生のアドバイス聞いておくべきだったと反省しました。通訳案案内の実務は富士通訳ガイドアカデミーのテキストと問題集を繰り返すことで十分だと思います。

3.2次試験対策

2次対策授業は、毎回通訳問題5問とそれに関連したロールプレイを行い、プレゼンテーションは「日本文化・日本事象英文テキスト」から順番に5つのトピックが指定され、そのなかからランダムに3つトピックが書かれた紙を本番の試験同様にその場で渡されプレゼンをし、先生から講評をいただくという内容でした。コロナ禍で受講者が少なかったため、ほとんど毎回順番が回ってきて通訳問題・ロールプレイとプレゼンの両方を行いました。
通訳問題は私の場合は、他の受講者の前で恥をかきたくないという思いから事前に家で英訳をして、それをある程度暗記して行くという事をしていました。これは英語表現のストックを増やすという点では意味がありましたが、もう少し英語力のある方は、その場で読まれた日本語をメモに取り、それを英訳するようにした方が試験対策になると思います。特に最近の傾向として通訳問題は長文化しているので、読み上げられる長い日本語をメモに取る、あるいは記憶するスキルは重要だと思います。
プレゼンの方はテキストの英語が少し高尚で自分の英語力に見合っていなかったことと2分間分のボリュームがないものもあったので、ネット等で調べた情報も加えて2分間相当の英文を準備していました。そのうちに指定された5つのトピックのうち3つ準備しておけば、ランダムに選ばれた3つのどれかには当たることに気づき、ただ授業を何とかに切り抜けることだけを考えて3つのトピックだけ準備するようになってしまいました。
富士通訳ガイドアカデミーの2次対策の授業は本番の試験に即した非常に実践的なものなので私のように、その場しのぎをせずに、きちんと取り組み復習していけば、これだけで十分に合格可能な実力が付くと思います。
本番の試験のプレゼンテーションでは「奥の細道」「春一番」「ワーケーション」の3題が出ました。「春一番」を選択し「春一番は立春から春分の間にその年で初めて吹く強い南風」と説明しだしたのですが、それ以上の知識を何も持ち合わせていないことにはたと気が付き、一瞬頭が真白になりました。確か7秒以上の沈黙はアウトと聞いていたので、慌てて「日本では春は学校や会社の始まる季節でもあり、桜も咲き、人々は春の訪れを待ち焦がれているので、洗濯物を吹き飛ばし埃を巻き上げるなど迷惑な風ではあるが春の前触れとして歓迎されている。」といった趣旨のことをシドロモドロに付け加えましたが、おそらく2分間に大きく足りていなかったと思います。これで落ちたなと思いました。終わった後でワーケーションを選択していれば、もう少ししゃべれたと思いました。トピック選択の時間が30秒しかないので難しいのですが、このトピックだったらどんな内容が話せるのかを判断して、トピックを選択することが重要だと思いました。
通訳は「和食」に関する日本文の英訳で、富士通訳ガイドアカデミーで何度もやったテーマなので割りとスムーズにできました。ロールプレイは「日本の家庭料理を食べたい」という観光客への対応ということでしたが、料理の上手な友人宅があるので紹介するというのも思いついたのですがプロのガイドの対応としてどうかなと思い、居酒屋に行けば家庭料理的なものもあり、リーズナブルな価格で色々なものを少しずつ食べることもできる。最近はファミリー向けの料理を用意している居酒屋もありお酒を飲まなくてもOK。と何とも平板な回答をしました。

4.これから受験される方へのアドバイス

1次試験はおよそ7割とればいい試験です。歴史や地理では、これは絶対に教科書や教材に載っていないと思われるマニアックな問題も出ますが、そんな問題は捨てて基本を押さえて行けば合格できます。また2次試験でも、私がいい例ですが、流暢な通訳やプレゼンでなくても、ガイドとしての適性をみられているのだと思い、試験官を外国人観光客に見立てて、親切・丁寧に接して楽しんでもらおうという気持ちで臨めば伝えたいことは伝わり、合格に繋がると思います。知念先生もおっしゃっていましたが、最後まであきらめずに取り組むことが大事だと思います。
またこの勉強を始めてから、自分の国の歴史や地理なのに知らないことが多い事に気が付き、普段から歴史や地理に関心を持つようになると勉強が楽しくなりました。そうしたテレビ番組を好んで観るようにもなり知識も増えました。「じょんのび日本遺産」「歴史秘話ヒストリア」「英雄たちの選択」がお勧めです。また「Cool Japan」も日本的事象を英語でどう説明するか、外国人は日本の何に興味があるのかを知ることができ、大変参考になります。

5.富士のよかったところ

雰囲気がアットホームで、先生方やスタッフの方が皆さん親切で丁寧なこと。また受講生は幅広い年齢層から様々なバックグラウンドをもった方が集まっていらっしゃる様に思います。ネイティブのようなプレゼンをされる受講生もいて、圧倒されることもあります。特に2次対策の授業では受講生同士のディスカッションや意見交換があるので、仲間意識も生まれ、それが励みにもなり良い刺激になります。そして受講料がリーズナブルです。