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小森さん

小森 正巳さん

富士アカデミー
2016年度合格者
通訳ガイド免許番号
(登録番号)
茨城県 第EN00192号

自己紹介

40年間の公務員生活を経て、外国人へ日本の文化の素晴らしさを正しく伝えたいという思いから、富士通訳ガイドアカデミーに入学しました。今回、鎌倉カーツアーにてガイドデビューの機会を与えていただき、感謝しております。まだまだ駆け出しですが、今回のツアーで、通訳案内士の仕事を続けたいという気持ちを強くしました。勉強不足を痛感する日々ですが、これまでの人生経験を生かして、外国人観光客に素晴らしい日本を実感していただけるように頑張りたいと思います。

<私のモットー>
「通訳案内士は民間外交官」
"Experience is the best teacher."
「一期一会」

旅行の概略

日程: 平成30年5月15日(火)
人数: 4人
お客様: フィリピン、インドネシア、韓国国籍の家族
札幌・小樽ツアー2日間の後、都内ツアー2日間。日本滞在約1週間。
最終日、帰国前日の都内ツアーを担当させていただきました。
訪問箇所: 皇居東御苑、築地市場、築地本願寺、浅草寺

ガイディングの実際

ミニバン型ハイヤーでの都内ツアー。
お客様の宿泊先、渋谷エクセルホテル東急にて8時45分、ハイヤーの到着を確認、運転手と日程の確認をした後、ベルキャプテンデスク前にて待機。驚いたことに、近くのロビーにて、お客様の札幌・小樽ツアーを担当された知念先生とお客様が歓談されていました。早速、輪に入り、自己紹介して出発。知念先生にお見送りいただきました。 高齢の1名について脚力が心配でしたが、知念先生からのお話とご本人から確認し、状況を見守りながら柔軟にコースを選ぶこととして出発しました。9時発。
約20分で皇居に到着。大手門から皇居東御苑へ。大手門の桝形広場や鯱、百人番所、富士見櫓、富士見多聞、本丸大芝生、天守台、桃華楽堂、汐見坂を経て二の丸庭園の順に回り、大手門へ戻りました。お客様は、大芝生周辺の様々な花に向かって、また天守台を背景に写真撮影に余念が無く、楽しそうに散策されました。園内には季節の様々な花が咲いていましたが、ツツジやアジサイといった平凡な花に興味を示されていました。天守台では石垣の大きさや見事な工法に圧倒された様子。天守台の上からは、北側に見える日本武道館、南側に見える大手町方面のビル群について説明しました。また、二の丸庭園では、天皇陛下が考案された、インドネシアの長いヒレの鯉と日本の錦鯉の掛け合わせで生まれた長いヒレの錦鯉に強い関心を示され、しきりにシャッターを切っておられました。
庭園内の通路でスケッチを楽しむ日本人高齢者のグループや、6月に開花するであろう菖蒲田や本丸大芝生にての除草など、熱心に活動するボランティアの数の多さにも驚いた様子でした。
散策の合間に、武士の時代の江戸時代に徳川幕府の中心が江戸城であったことや、明治時代以降は天皇の住まいである皇居が置かれ、現在に至っていること等、江戸城と皇居の歴史について説明。二の丸庭園の日本庭園について、回遊式庭園であること、仏教の5つの要素である空、風、火、水、土を現していることなどを説明しました。
また、徳川幕府開設以前は小さな漁村にすぎなかった江戸の地が、江戸城を中心に螺旋状に伸びる堀が建設され、全国から海上輸送で集められた物資が江戸市中に行き渡ったことで大きく発展し、今なお、首都高速道路を中心に繁栄する東京の都市計画の原型が江戸時代に作られていたと言われていることなどを説明しました。脚力に難があるお客様のペースで歩いたことから時間が迫っていたので、大手門の反対側車線にてタクシーに乗り、二重橋や皇居外苑に植えられている黒松の説明は車内からになりました。皇居11時発。
その後、約15分ほどで築地本願寺に到着。途中車内から、昼食予定箇所の築地場外市場のお店へ5名の予約を完了。お客様から、昼食については待ち時間が無い店にしてほしいとの意向があったことを受けて。予約ができる店を数件確保してあったことが幸いしました。
築地本願寺ではその歴史や、日本では珍しい鉄筋コンクリート造りになった経緯、様々な動物の像が置かれている理由等について説明しました。内部は伝統的な木造建築です。
浅草にあった本願寺が、明暦の大火で焼失。江戸幕府による区画整理で与えられた代替え地の現在地は、当時は八丁堀の海上。佃島の門徒によって新たに築かれた土地ということから「築地」という地名となったとのこと。
また、関東大震災の教訓と、インドやヨーロッパにまで調査団送り調査した結果を基に、インドの古代仏教建築を模した寺院であること、菩提樹の紋章は、釈迦が悟りを開いたのが菩提樹の下であったこと、牛、象、孔雀、獅子、馬等の多くの動物の像が設置されているのは、輪廻転生の考えに基づくものであることなどを説明しました。
寺院内では法要が執り行われており、敬虔な仏教徒である韓国人の女性に誘われるように、4人全員が焼香して最前列席に座り、読経に聴き入っていました。
歩いて築地場外市場へ移動。早速、予約した店にて昼食。旺盛な食欲で、多くの種類の刺身、鰻重はじめ様々な種類の和食を摂られました。寿司ではなく、ご飯と刺身を別々に注文されていたことが印象的でした。食事後、狭い通路に沿って歩き、牡蠣専門の店で生牡蠣を食し、トイレの後、包丁専門店で交渉するも、ステンレスではないので買うことを断念。1本で2〜3万円のものを買おうとしていたようです。場内関連店舗にて「築地市場」の名入りの野球帽を購入。
13時20分、築地発。約30分で浅草着。
スクランブル交差点を挟んで雷門の反対側に位置する浅草文化観光センタービルの8階屋上から浅草地区を鳥瞰し、浅草寺の全容、隅田川、東京スカイツリー等について説明の後、雷門、仲見世通り、宝蔵門、香炉、五重塔の順で見学。三社祭を控える浅草神社と神仏習合、二天門について説明しました。
仲見世通りでは様々な買い物をされ、特にフィリピン人女性の購買力は旺盛でした。親族へのお土産に、数種類の同じものをまとめて20個ずつ購入といったことに加え、特に、傘をコレクションしているようで、値段を気にせず気に入った傘を物色し、スーツケースに入るサイズのものを買われました。
日本滞在中、購入後に風で飛ばされて紛失した「北海道」の名入り帽子をどこかで購入したいとのリクエストを受けて、浅草での店で開催中の「北海道展」に立ち寄ったが、帽子の在庫は無く、残念。
仲見世の混雑、また、敬虔な仏教徒の韓国人女性が本殿へお参り、といったことで時間を費やし、浅草を出発したのが15時10分。
ホテル着は16時。1時間オーバーとなってしまいました。

陽気で買い物好きな方々で、私の説明より写真撮影と買い物に関心があったようです。築地市場は前日と合わせ2回の下見をしていたので、時間に追われましたが、あわてず落ち着いて対応出来ました。

ハプニング

朝の出発の際に、知念先生がホテルにお見えになり、お客様も喜んでおられました。
他は特にありませんでした。

新たな発見

今回のツアーに際し、改めて江戸と東京の発展の歴史、特に江戸城を中心に拡大する江戸の街の都市計画についていろいろと調べ学習をしました。多くの新たな情報に接し、再確認できました。ガイドの現場で即役に立つものばかりではありませんが、日本のことについて、毎回新たな発見をしていることにささやかな喜びを感じています。

面白い質問・意外な質問・難問・珍問

日本のウィスキー、「サントリー山崎12年もの」が欲しいが入手できない。価格は1万円くらい。日本に来て以来、北海道、東京都内であちこち探しているが、どの店も売り切れで在庫なし。行ける範囲の量販店は探し尽くした。宿泊している渋谷エクセルホテル東急の周辺のドン・キホーテへも行ってみたが無かった。山崎の25年ものは高すぎるので買えない。12年ものでよいから日本滞在中に買いたい。
お客様のお話によると、海外旅行客の間で人気があるらしく、品薄になっている様子。空港の免税店にも在庫が無い模様。何とか、国内のお店で買いたい、とのこと。
都内を走行中に、小さな酒店でもあれば停車して立ち寄ることも視野に入れ、ドライバーにも協力を頂いたが、結局、コース沿いでは見つからず、再度、宿泊先のホルのフロントで近隣の量販店や小売店情報を入手し、再度挑戦することを勧め、お別れした。
そして、ホテルへ送り届けた翌日、帰国の朝、タクシー到着の時間の件で私の携帯に電話が入った際に尋ねたところ、「ホテル近くのドン・キホーテで、山崎12年もの1本を買うことができた。協力ありがとう。」の感謝の言葉がありました。

このツアーで特に準備したこと

都内のガイドは、これまで研修のみで、実際にお客様を案内するのは初めてでしたので、入念に下見を行いました。皇居、築地市場、築地本願寺、浅草の4か所でしたが、1日で2万5千歩を歩きました。まさに体力との勝負でした。
特に、築地市場は、場内場外ともに約20年前に行っただけで、情報は皆無。市場が休場となる日と皇居の非公開日を避けて、5月10日の木曜日に下見に行きました。また、ガイド本番の前日にも、築地市場内見学開始時間の10時に合わせて下見をしました。場内を見たいというリクエストがあった場合に備えて。再度、場外のお店も確認。
皇居、浅草は研修で数回訪ねたこともあって、土地勘やコースのイメージはありましたが、やはり実際にお客様を案内するとなると、英文のガイドを片手に、再確認のためにじっくりと歩きました。
ポイントは、トイレの情報(位置、洋式女性用トイレの数、清潔さ等)、昼食の場所とメニュー・価格帯、タクシーの駐車場の位置や待ち合わせ場所、土産物店(品揃え、価格)。
昼食は、築地場外市場、場内市場の両方を歩き回り、情報を集めました。回転寿司のほか、直前に予約ができる和食の店で、生もの(寿司、刺身)と調理したものを両方扱っている店を数軒調べ、他にも中華やイタリアンの情報を収集しました。築地市場は、10月に豊洲へ移転しますが、場外市場は残るとのことです。今回の下見で得た知識、情報は、今後のガイドの際の宝物なったと感じています。

このツアーで特に配慮したこと

1名が高齢で歩行に難があること、当日は日中の気温が上がる予報が出ていたので、水分補給とトイレに注意することを心掛けました。

旅を終えた感想

今回の都内カーツアーに際しては、知念先生から、コース設定はじめ様々なアドバイスを戴いたおかげで、滞りなく仕事を全うできたことにつながったものと感謝に堪えません。
予定時間を1時間オーバーしましたが、入念な下見を行ったことで、柔軟に、そしてお客様のご満足を頂ける形で、旅を終えることにつながったのではないかと思います。
観光地ごとの新人ガイド研修で得た知識は、富士アカデミーでの座学で学んだ知識とともに、本当に役立ち、助かりました。勿論、実際の案内では、お客様の顔を見て、説明に興味を示しているか、何に関心を持っているかを判断して、説明内容に工夫が必要になりますが、経験を積み重ねることで、より洗練されたガイドができるようになっていくように思います。
また、今回は、大地震や津波の際の避難場所情報の準備が充分ではありませんでした。大地震に続く津波であれば、近くの高層ビルへ逃げるといった心の準備だけで、具体的な避難所の情報を準備できなかったことは、大きな反省点です。

私のお勧め観光スポット

関西では、京都、奈良。また、関東では鎌倉、日光の社寺と自然景観、富士箱根、都内巡りでしょうか。

Short Essay

昨年、富士総研の連続講座に参加させていただき、多くの日本文化論、日本人論の書物に接することができました。圧巻は、和辻哲郎氏の著作「風土」であったように感じています。日本に多神教が生れ、根付き、育っていった過程や背景を、一神教との比較に立って考察したもので、多くを考える機会となりました。他にも「武士道」「十七条の憲法」「世阿弥」「教育勅語」などなど。外国人に神社、寺院、日本の文化を案内する際に、深い部分を理解しておくことがいかに大切かを感じることができました。

勉強中の後輩へ励ましの言葉

私自身、デビューしたばかりの駆け出しのガイド。後輩の皆様への励ましの言葉はおこがましく、すぐには思い浮かびません。私自身は、富士アカデミーでただただ我武者羅に、そして楽しみながら学習したイメージがあります。「日本のことをこれほどまで知らなかったとは...。この日本語を英語でどう言うのか...。」の連続でしたが、本当に楽しい時間でした。
皆さんが今取り組んでいることは、全てが役に立つものです。日本を訪れる外国人に日本について正しく伝える民間外交官を目指して頑張ってください。
私は、通訳ガイドとして生涯学び続ける姿勢を貫き、60歳代、70歳代の青春を楽しみたいと考えております。

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