津金倫明さん
2020年度通訳ガイド試験当校合格者
<自己紹介>
「世界中の人に日本のことを好きになってもらいたい。日本人にも彼らのことが好きになってもらいたい。」その思いが通訳案内士を目指した原動力だと思っています。歴史は教えてくれます。人間性と社会を解放し、交流を深めることによって人類は歩んできたと。その意味でグローバリズムは自然な流れであり一人ひとりの小さな取り組みが大切です。
外国語大学卒業後、30年以上高校の英語教員として英語と接してきました。しかし語学の習得にはゴールはなく、ことばを教える者としても、自ら学ぶ者としても苦闘の時間を過ごしてきた感じがあります。教員の海外研修派遣のため半年イングランドの大学で勉強できたことはいろいろな面で転機となりました。教員最後の10年間は管理職として、日本人学生の海外研修引率や海外留学生の受け入れ等に多く携わり、海外との交流の大切さを知る機会も得ました。世界の平和と発展のために、微力ながらも、大好きな旅行、地理・地学、そして英語の知識経験を活かせないかと思っています。
日本にいる限り、語学の習得は日常どれだけその言語に接しているかにかかっています。私の場合、英字新聞の購読、衛星放送視聴、ラジオ講習等できる限り英語に接してきました。しかしまだまだブラシュッアップが必要だと思っています。全国通訳案内士の試験は二浪し、三回目の正直で合格しました。一年目に富士通訳ガイドアカデミーの名古屋での集中講義を受講し、次の二年間は独学でした。知念先生はじめ皆さんにお世話になりました。ありがとうございました。
1.1次試験英語対策
- 富士通訳ガイドアカデミーの教材では、直近3年間の本試験過去問が大変役立ちました。どのような問題が出るのか把握でき、心の余裕ができました。又、「日本文化・日本事象英文説明テキスト」「文化・観光・時事用語集」は出題されそうな事柄の英語の説明や語彙そのものがまとめて書かれてあり、繰り返し活用しました。何を知っておくべきかの目安にもなりました。
- まず、過去問を実際の制限時間で解いてみます。どのような問題がどのような形式で問われているか、時間内に解答できるかどうかなど把握することが必要です。思い込みで設問の主旨を取り違えないことは初歩的なことです。(例:正しいものを選ぶのか正しくないものか。)マークシート形式で無解答にしないために、どの問題から解答するか、迷ったらどうするか、などの方針を決めるべきでしょう。
- 長文に慣れること。そのために比較的平易な長文を多く読んでおくことが必要でしょう。例えば国内の英字新聞(The Japan Times、 The Japan News等)のニュース記事。日本語で内容がわかっている場合は量的にかせげると思います。ただ、長文と言っても、解答に関わる部分だけを読めば答えがわかる設問も多いようです。設問が文法・語法や語彙に関わるものなのか、内容に関わるものなのか見当がつくならば有利です。私は設問を最初に眺めてから読解に入りました。
- 和文外国語訳問題(英作文)については、文法、語彙力等の知識を総動員させる必要があります。選択肢は内容が類似していますが、違っている部分を手がかりに丁寧に意味を考えていく力が必要です。正解が得にくい問題だと思います。
- 外国語による説明問題(日本事象説明)については、文法や語法の問題ではなく、地理、歴史、一般常識等の知識が問われています。オンラインの外国人向けの日本紹介のサイトに日頃から接しておくことも有効でしょう。英字新聞の国内観光地の紹介記事などは非常に役に立ちました。
2.1次試験社会科対策
- 富士通訳ガイドアカデミーの教材を中心に勉強しました。出題が予想される項目を中心にまとめられているので使い勝手良しです。苦手な歴史と一般常識、新しい科目である通訳案内の実務は特に時間をかけ繰り返し活用しました。
- 地理は得意です。地図帳や時刻表を眺めたり、地名を覚えたりするのが大好きです。地理の要素は1次の英語、歴史、一般常識の試験問題に多く関連しており、地理の知識が1次突破に貢献すると思います。なぜ地理が得意になったかといえば、旅行や登山が好きなこともありますが、知らない土地に行ったら必ず家で自分のたどった経路を地図で確認することにしており、その積み重ねだと思っています。そのため、所有する国土地理院の地図はかなりの枚数になりましたが、現在はオンラインの無料検索サイトを利用しています。又、テレビや新聞で知らない土地についての報道や記事があると地図で確認します。1次試験に向けて、旅行会社の種々のパンフレットをかき集めました。人気スポットは頻出項目だからです。知らない場所については地図で確認し、写真と行程を頭の片隅に入れました。例えば、2020年度出題の男鹿半島の入道崎と石焼料理は的中しました。
- 歴史は苦手なので、地理より時間をかけました。配布教材のテキストや山川出版の日本史教科書の内容を頭にたたきこみました。特に文化史関連が多く出されるので重点的に復習しました。
- 一般常識については出たとこ勝負です。あまり興味が無いアニメや芸能関連も含め、様々なニュースに目を通し、新聞を隅々読む努力をしました。あとは配布教材の反復学習です。
- 通訳案内の実務は配布教材を中心に繰り返して勉強すれば問題ないと思いますが、2020年度の問題は難化したのではないでしょうか、解答に迷うところがありました。
3.2次試験対策
- 1次試験は二回とも全科目合格でしたが2次試験は三度目の正直で合格となりました。2次の面接が私にとっては最大の課題で、何が不足していたのか深い見直しが不十分だったかもしれません。平成30年度より始まった実務質疑(ロールプレイ)の試験で問いかけに対して一方的に話しただけになってしまったのが失敗であったような気がします。2019年度もそのことに気付かず、こちらからの一方的な発話に終始しました。
- プレゼンについて、モデル英文を覚え自分流に発表できることを目指します。覚えるべきモデルの一つのタイプは、数は多いのですが、「日本の宗教」、「封建制度」、「日本の家屋」のように日本に関する事柄の概括的な説明です。これらがしっかり頭に入っていれば、特定の題目が出されてもその一部を利用してプレゼンをこなすことができるでしょう。もう一つのタイプはズバリ出されそうな題目を自分で考え出したもの。出題傾向から推測して日本の時事、社会、文化事情を反映する題材を中心に、数を30程度に絞りました。「どれか一つは必ず出る」の思いで朝の散歩や通勤途中など徹底的に覚えこみました。その一つ「新しい生活様式」が幸いにも当日の題の一つに出ました。概括的な説明のモデルは配布教材の「日本文化・日本事象英文説明テキスト」を大いに利用しましたが、そのまま覚えるのは難しいので、自分が言いやすいように150~200語で英語を編集し直しました。
- 逐次通訳について、読まれる日本語が正確にメモできればいいのですが難しいと思います。メモ取りの訓練ができるといいのですが。細かなところに気を取られるのではなく、全体的な内容を外さないことが必要でしょう。不明な部分があっても推測して適当な語句で補い、要旨を伝えることを一番にします。テレビやラジオの日本語を同時通訳的に英語にしてみるような練習をもっとすべきだったと反省しています。
- 実務質疑(ロールプレイ)について、先に述べたように、設問の趣旨がよくわからず一方的に答えてしまったことが失敗につながったと思っています。ロールプレイで面接官とやりとりするのですが、与えられる場面は応答に窮するものが多いようです。ここでは絶対的な正答がなく、いかに機転を利かし、お客様に対してホスピタリティが感じられる応答になっているかがポイントになるでしょう。観光庁研修テキスト第1編2-2「訪日外国人旅行者に対する特別な配慮」から種々な場面を想定して英語の応答を考えてみました。
4.これから受験される方へのアドバイス
- 日本に住んでいる環境で語学の習得は容易ではありません。普段から英語に触れる努力が必要だと思います。ただ近年は、オンライン環境の普及で目を見張る教材やレファレンスが24時間、無料で活用できるようになりました。情熱と工夫でチャレンジしてもらいたいと思います。
- 通訳案内士の勉強でいかに日本のことを知らなかったか、日本がいかに素晴らしい国なのかということを知りました。日本の歴史、伝統、文化、宗教といったものにもっと目を向けていく必要があるでしょう。
- 私は2回不合格となり投げ出したい気持ちにもなりましたが、「今の状態では通訳案内士になる資格はないのだから踏ん張ろう」と言い聞かせながら合格にこぎ着けました。「時間をかけてやれば何らかの形で報われる」と信じて、夢を実現させてもらいたいと思います。
5.富士のよかったところ
- 配付された様々な教材を徹底的にこなせば1次試験は合格できます。過去問や出題傾向を考慮に入れて編集されています。通訳案内士になっても活用できるテキストも多くあります。
- 他のスクールとの比較はできませんがアットホームで親身になってくれる雰囲気が感じられます。スタッフの方々にもいろいろと気を使っていただいた印象があります。大規模な予備校のようなところに合わない人には向いているかもしれません。
- 名古屋には通訳案内士に特化したスクールはなく、その意味では名古屋で集中講義のコースを開設してくれたことは大変ありがたく思いました。地方で活躍しようとする通訳案内士をサポートしてくれる心配りと気風が感じられます。